大谷能生 連続レクチャー「二〇世紀の歌と抽象 --ポピュラー・ミュージックと『ジャズ』」第1回 at カフェ・パルル

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新栄カフェ・パルルにて行われた大谷さん(以下、敬称略)のレクチャーに行ってきました。

カフェ・パルル : 連続レクチャー「二〇世紀の歌と抽象 --ポピュラー・ミュージックと「ジャズ」」

第1回のテーマは「I Loves You, Poggy」。

私の書き殴りメモによると以下のような内容。

・ポピュラーミュージック(以下、「ポップス」)と(録音媒体としての)メディアは"なぜか"相性がいい。ポップスはメディアチェンジを乗り切って今日まで来た。

以下、アメリカにおける楽譜産業の隆盛、著作権の発生、ポピュラー音楽作曲家という職業の成立が同時期であることを指摘し、その関連性を説明。

・音楽には、ポップスとシリアス・ミュージックの2種類があり、これらは相互に峻別されていた(少なくともポピュラーミュージック誕生の当時は)。

・私(=大谷)は、George Gershwinをポピュラー音楽作曲家の草分け的存在として評価したい。

ここで、重要なこととして、
・ブルースとジャズに直接的なつながりはない
・ガーシュウィンはいわゆるジャズミュージシャンではない
の2点を確認した。

以下、ガーシュウィンの音楽的ルーツを当時の時代状況から説明。

・ガーシュウィンの時代のジャズ像は、いわゆるニューオリンズジャズである。その特徴は和声法的ではなく、対位法的である。しかし、ガーシュウィンの作曲法は対位法的ではない。

・こうした当時の状況を踏まえると、ガーシュウィンの楽曲にみられる「ジャズっぽさ」の特徴は、(主として??)その「ビート」にあることがわかる。彼はピアノが得意だったからである。たとえば、ラグタイムやストライドピアノといったジャンル・奏法にみられる「食ったり戻ったりする」感覚、和声法的なアプローチがガーシュウィンの特徴と符合するといえる。

・「ポーギーとベス」における楽曲をみれば、ガーシュウィンが黒人音楽にかなり習熟していたことがわかる。しかし、"I Loves You, Poggy"自体は、(それほど??)黒人的ではない。他方で、同オペラのほかの曲には、パーカッシブなものもみられる。

・マイルス・ディヴィス/ギル・エヴァンスの『ポーギーとベス』における、"モーダリティ"、"ポリ・モーダリティ"という概念の採用は、こうした白人/黒人(アフリカ)性を再度取り戻すもの(=両者の混交性を踏まえたもの??)となっている。

・ガーシュウィンの特徴のもう1つの鍵、「ユダヤ性」については触れることができなかった。

感想を。

 大谷自身は言及しなかったが、レクチャーを聞いて、白人/黒人/ユダヤといった異種混交性がポップスの特徴を形作っているということなのだと思う。そうだとすると、音楽の人種/文化規定性を指摘する立場だといえる。で、それはそのとおりなのだと思う。

 しかし、人間は自分の出自(または志向性)に自覚的である場合に、出自を隠蔽することも可能なはずで、音楽的に優れた才能をもつガーシュウィンが、これは白人的だ、あれは黒人的だという自覚があったとすれば、それにも関わらずなぜ異種混交的なアプローチを採用したのか、という点が気になる。疑問をいいかえれば、なぜ、ガーシュウィンは和声法の「ぬくもり」のようなものを払拭しようとしなかったのか、あるいはできなかったのか、ということだ。

*著作権に関して

引用(または要約引用)の範囲内で書いたつもりですが、当然ながら、公衆送信権その他の支分権は大谷さんに帰属します。このブログは基本的に転載フリーですが、このエントリに限って、転載は禁止いたします。大谷さんご本人または著作権者のかたからご指摘があった場合には、すぐ削除いたします。

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